• 大
  • 中
  • 小
  • フォント
群馬の技一番
高田 年三さん
所在地  高崎市
受賞年度  平成20年
木製建具製造に従事し、特に古くから伝わる高度な技術を要する仕事の一つである組子製作技能に優れている。また、後進技能者の育成にも尽力し、技能五輪全国大会・技能グランプリ全国大会・全国建具展示会等での入賞者を輩出している。
木製建具製造工
高田 年三
さん

俺みたいな馬鹿が必要

「俺みたいな馬鹿が必要」
「俺みたいな馬鹿が必要」
戸や障子などの建具の製造を一筋に手掛け40年以上となる高田年三さん。中でも釘を使わずに木を組み付ける組子細工に力を注ぎ、0.1ミリの精度で生み出される作品は数々の賞に輝いてきた。

一方、従来の「親方の技を見て盗む」修業では日本の伝統が消えていくという危機感から、20年にわたり自らの工房で「組子研究会」を開催してきた。「誰かがやらなければならない。それには俺みたいな馬鹿が必要」と、身一つでこの世界に入り培った経験を、道具や材料もろとも惜しみなく提供している。技術だけでなく社会人としての心構えも伝えようとするその姿勢は「親から教わった欲をかかない奉仕の心」が築き上げたものだという。

親方を超えられるわけがない

「師匠からもらったものは一生の宝」と愛用の道具を使う高田さん
「師匠からもらったものは一生の宝」と愛用の道具を使う高田さん
高田さんがこの世界に入ることを決めたのは12歳の時のこと。当時は建具の他にも畳や銅製品といった様々な職人の仕事を間近で見ることができ、自然と職人の道を歩もうと思ったという。中学校を卒業後すぐに働くことを決めていた高田さんは、就職組だからという理由で同級生から馬鹿にされたこともあった。「10年後大学卒業組が社会人になりたての時、自分の工房を持って一人前の社会人になっていようと思った」。

その言葉の通り、中学校を卒業後夜学に通いながら県内の木工店で修業し、25歳の若さで独立した高田さん。目で見て盗むしかない修業と仕事を終えてからの勉強の両立に挫けそうになることもあったが、先生や親方・家族の励ましで乗り越えることが出来た。「親方を超えられるわけがない。自分にこの道で飯が食えることを教えてくれた人を超えることなんて一生できない」。

作品に生き方が出る

Rの組子 「直線と曲線が交わる部分が難しい」
Rの組子 「直線と曲線が交わる部分が難しい」
独立した後も腕を磨くことに一心に取り組んだ高田さん。修業中に出合った組子の技術も、仕事の傍ら試行錯誤を重ね追求し続けた。その腕が認められ展示会に出品した作品が入賞し、仕事の依頼も大量に舞い込むようになった。しかし「自分で一つ一つ作って、お客さんに『良かったよ』と言われる商売がしたい」と人手を増やすことはせず、自分の仕事をすることにこだわったという。

そんな高田さんだが、新境地を切り開こうと挑んだRの組子では最大の挫折を味わった。Rの組子の技能を持つ職人は全国に何人もおらず、誰からも教えてもらうことができずに3度失敗し一か月悩み通した。「4度目完成しなかったら廃業しようと思った。これが出来なかったら続けても意味がないと思った」と、工房で一人涙した苦闘の日々を振り返る。その後、最初に思いついたアイデアを再び実践したことが功を奏し、完成させることが出来た。「作品に生き方が出る。一番最初に思いついたことが一番いい。迷ったら駄目」。生き方そのものを見直すきっかけになった。

木は人間と同じ

「木の年輪でたとえれば人の一生なんてこんなもの」
「木の年輪でたとえれば人の一生なんてこんなもの」
現在、高田さんは仕事や後進の育成に励む一方、休日は奥さんと研究がてら旅をするなど充実した日々を送っている。開催している「組子研究会」のメンバーの多くが技能五輪・技能グランプリ大会で上位入賞していることについても「全員現代の名工になれると思っている」と思わず顔がほころぶ。

そんな高田さんがこれまで向き合ってきた木にかける思いは特別なものがある。「木は人間と同じ。丸太を製材するとそれぞれ性質が違ってくる。それを全部一人前の木として独り立ちさせなければならない」。そんな思いから生み出された作品は「私が死んだら49日まで骨壺からあんたの作品が見たい」と言われるほどだという。「木の年輪でたとえれば、人の一生なんて7センチか8センチくらいのもの。この中でいかに社会のため・人のためになれるかを考え、自分の道を進むことが大切」。
若者へのメッセージ
「忍耐と努力が大事」

「下から見ないとものはわからない」

「早くからいい仲間を作っておけ。腹から話せる、損得のない仲間を作れ。それが財産になる」

「人生はすべて積み重ね。人の20年分の仕事を10年でやればいい。密度を濃く生きればいい。すごい人生が待っている」

「人間は必ず失敗する。必ず迷う。でも、どんなことがあってもまっすぐ行った方がいい。まっすぐ行けば苦しみは途中で癒える。そこから自分の世界が始まる」

「木以貫之」